日記

日記です

20231224

小説

 この前読んだ『きみの話を聞かせてくれよ』がとても良かったので、作者を追いかけてこの作品も読んでみた。とても重く、心動かされるところが多い作品だった。

 どうも僕はこういう「負荷が高い世界で生きる子供」の話に感じ入るところが大きいと気づいたが、それは"無力感"という部分を重く見ているからなのだろう。世界に対して無力で、苦しい運命を打倒することはもちろん、逃れるという手段すらも存在しない子供。そういう無力な存在であるほど、強く無慈悲な運命とのコントラストが強調される。

 そこから児童相談所という現実的な手段に着地していくところも、考え方を感じる。作中作も出てきて、必然的に一段メタな階層が生じている中で、それでもファンタジックな奇跡的解決ではなくて大人による介入をギリギリの危うさで書くのは覚悟が決まっている。

 しかし、僕ももう大人ではあるが、あまり無力感自体は変わらない。逃れることくらいはできるようになったのかもしれないが、それだって口座の残高が尽きるまでのことだ。もっと大きなレベルでの世界の構造が見えたりして、多少やれることが増えた程度ではどうにもならないとわかってしまう。

 僕は僕なりの戦い方を考えているし、それがなんとかなってほしいけど、必ずどうにかできるとも信じられてはいない。でも、ほんの少しでも良いから今より無力じゃない存在になりたい。無力じゃなくなってやることは、自分のやりたいように世界を作り変えること、世界の方向性を少し自分好みの方に推し進めることだから、ここには徹底的に自分のエゴしかないんだけど、それはきっと、そういうものなので。


 それぞれ固有の痛みを持っており、それらを注意深く、とても注意深く手で触れて、撫でて、少しずつ変形させることで、なんとか死なずにやっていけるかもしれない。そういう話を、僕は好む。