日記

日記です

20190515

 J.D.サリンジャー(中川敏訳)『九つの物語』を読んだ。短編集。『バナナフィッシュに最適の日』はこれが噂の、という感じだった。そして確かに絶賛されるだけはある。バイアスがかかっているだけかもしれないが。終わり方も唐突ではあるんだけど、漫然と破滅を予感させる描写は散りばめられているので悪い驚き方にはならない。このようにして破滅に至れたら良いと思ってしまうが、実際は良いなんてものでもないんだろう。そうはいっても、というところではあるが。

 あとは『エズメのために』『テディー』あたりが特に印象に残ったか。精神的な病からの救済ってなんなんだろうな。僕にはさっぱりわからない。他人がそのトリガーになってしまうことは、創作の中なら許せるけど現実として考えると少し嫌な話だと思う。仏教については知らない。知らないけどきっとそんな簡単なものでもないんだろうと思う。

 『笑い男』はどこかで見聞きしたことがある記憶があってなんだったかと考えていたが、『虚構世界の存在論』に例として出てきていたかもしれない。描写があるので虚構世界にバスが存在していることは認められるが、さて描写されていないバスの"色"は存在しているだろうか、というような文脈だった気がする。もう少し笑い男の内容にも触れていた気がするので、作中作的な仕掛けについてのところでも挙げられていたかもしれないが。あぁ「笑い男」という単語自体は攻殻機動隊にも出てくるのか。僕はさっぱり観たことがないけど、意識のどこかに引っかかっていた可能性はある。

 サリンジャーを読む情報系の修士一年、なりたくない姿だとは思いつつそれなりの確率でなってしまう姿でもあるとは思っていた。4年ほど経って、それが今。幸福の上限値が低いところで決まっていそうである。