今日は家に引きこもっていた。
読んだもの
いきなり言及した作品の種を割っていて笑ったが、指摘自体はそこそこもっともらしいとは思った。僕は写実性を重視しろという立場ではないし、読者に対する公平性もどうでもいいという人間だけど、一方で特殊なトリックについて実行者が「これでやれる」と思えるかどうかという部分はやや気にしてしまうタイプだと思う。動機は非現実でも全く構わないが、動機から導き出される目的に対して、その犯行計画が最も合理的だと本当に考えたのかなという点は重要視したい。キャラクターは合目的的であって欲しい。そういう意味ではやはり現実に近い設定だと大変そうで、城平京みたいに非現実設定を混ぜ込みつつロジックの話をしていくのが良いんじゃないかなぁと思う。
漫画
- 作者: 城平京,水野英多
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2002/04
- メディア: コミック
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なんか全巻セットが安くなっていたので久しぶりに再読。かなり忘れていて普通に面白かった。まぁミステリ慣れしている人からすればそこに仕掛けを置くよねというのは自然に見えるものなのかもしれないけど、僕が初めて読んだ当時は全然考えなかったものだな。今でも別に推理しながら読むタイプではないので記憶を消して読んでも同じ反応になるかもしれないが。
「このキャラクターはこういう原理で動いているので、必然的にこういう行動を取る or こういう行動は取れない」という構図を利用して話を動かしていくのが好きなんですね。その原理部分を隠しておいて、最後に明かすパターンにすれば作品全体をワイダニットにすることができて演出的にも盛り上がるし、だいたい根本からして行動原理を考えることが、幸福や希望、救済を考えるっていうことなんだよ。それを真正面からやっていける城平京はほんとうに得難い作家だ。
スパイラルの画集がまとまったやつ(なぜかAmazonリンクが貼れない)も買った。まぁ別にこういうのにそんな興味がある方ではないし、画集を電子書籍で買うっていうのもどうなんだって感じもあるけど、だいたいお布施という気持ち。好きな作品に対して追加料金を払う方法ってそんなにたくさんあるわけでもないし。
- 作者: 城平京,左有秀,彩崎廉
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2013/12/06
- メディア: Kindle版
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やはりこれも綺麗にまとまっていて良い作品だ。ただやや世論的な、大衆に対する説得力みたいなものを重視しているところがあるようにも思えていて、知略バトルとして盛り上がるシーンに欠けているようには見える。その分霊園での吉野と真広の再会シーンとか、随所に挟まれる引用とか、印象的な場面はあるのだけど。まぁあとがきでも書かれていたけど、下敷きにしている作品がそこまで明るくないとか、テーマが「負けが決まっている勝負に対してどう向き合うか」みたいなところに置かれているのでそれも仕方がないところではあるんだろう。
つまりこれはある意味でスパイラルでいう鳴海歩以後の話みたいなわけなんだろう。だからどうしても地味にはなってしまうし、しかしこれは重要なところでそういうのをきっちりとやってくから「ではあらためて始めましょう」が最終話のサブタイトルになる。漫画作品だとどれも「その後」がそれなりに希望的に描かれているのは、それがやっぱり城平京の核的な考えなんだと思う。
これで城平京作品再訪シリーズは一区切りかな。虚構推理はそこそこ最近読んだので今回はパスで。振り返ってみるとやっぱりスパイラルが僕の中では頭一つ抜けている。出会い方、話のテーマの置き方、演出の仕方、どれもが上手くハマったという感じ。2番目以降の順位はつけられないかな。どれも甲乙つけがたく、大変好きとしか言いようがない。いやー良かった。なんとなく、少しだけ生き方の指針が見えてきた気がする。手段と目的があべこべになっている気はするし、早晩破綻してしまうだろうという予感もするが、でも自分という生き物はそうでしかありえないんじゃないか。いややっぱりこれではダメか。うーん。