日記

日記です

20211213

 すごい、これでもう9回目の読書になるらしいが、何度読んでも興奮する。(僕にとって)大大大大大傑作だ。僕には今これが必要だというものがそのまま出てきた。これが必要だったんだ。

 あらゆるモチーフが、めちゃくちゃな勢いで流れ込んでくる。整然と並んでいるという感じではない。やや強引にも思える結びつけ方がある。しかしめいいっぱいに込められたアイデアの束を一丸となって襲いかかってくるのだ。

 月夜のシーンを見たか? あのマクロな視点とミクロの視点の大胆な切り替えをトリックにして本命の虚無主義を凄まじい勢いで僕に突き刺す恐ろしい手管よ! そしてレースシーンによる心身二元論の超克。この一連の流れ自体が通底するテーマであるパルクールを彷彿させる美しい緩急を描き出しているのだ。

 かっこよさも滑稽さも相対化して、究極の果てになにがあるか。本書タイトルがクライマックスでバチンと現れたとき、思わず感嘆の声を挙げてしまった。今までは、どちらかというと本書の示した問題意識を評価していて、最後の回答はイマイチわからないという感覚だったが、今回の読書ではそこがすごく響いた。もちろん完全にわかったとは言えない、この小説を読んでそういう回答には成りえないだろうが、でも、漫然と、上手くは言えないけどプラスのことが自分の中で起きた。

 否定してみせることで肯定してみせる技法がある。自己批判そのものを小説で書いてみせることに価値がある。そういう反復と揺れ動きと相克がこの小説自体の核心となって立ち昇っている。今読んで良かった。最高だった。