小説
- 作者: 河野裕,越島はぐ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/08/28
- メディア: 文庫
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素晴らしい。理想的存在のために頑張ってひねり出した「幸福と言い張る」「やせ我慢」を圧倒的に上から救済される話と読めて、この構図が本当に完璧。いや、わかるよ。最後の救済はおまけだし蛇足とも言えるかもしれないということは。でもその前で話としては完成しているからそこで救われても救われなくてもそれは同じことなんだ。
河野裕の文章はすごく肌に合う。キャラクターの思考具合、会話のテンポ、落ち着きと振る舞いといったものが全部好みだと言える。いやすごいなぁ。そんなことってなかなかないよ。
仕掛けとしては、これみたいにキャラクターの行動原理を利用したロジックというのが僕の好みなんだなという理解に到達した。自分の好みは単純なミステリではないし、狭くワイダニットと言っても正しくはなくて、理念・理想とそれに伴って定まる行動のルールを利用して物語を駆動させるという仕掛け方。こういうのってなんというジャンルなんだろう。他にも良い作家を探せたら良いが、まぁ城平京と河野裕を見つけられている時点でもう十分すぎるくらいかもしれない。こう、自分は自分に合った本を探すのが下手なのではないかとやや悩んだりしていたんだけど、明確に好きと言える作家がいくらかいるのだから結構上手くやっているのかもしれないと思い直したり。