- 作者: 城平京,片瀬茶柴
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/06/21
- メディア: 文庫
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おおむね想定していた範囲内で面白かった。逆に言えばそこを飛び越えてくることもなかった。どうしてもまだ大きな物語的視点からすると話の途中感があるなぁ。おそらくそういう全体としての部分としてみれば重要な要素を提示している話なんだろうが、続いている話の途中を追うっていうのはやはり好ましいものではないと思う。このシリーズが完結した状態で読み始めてみたかったものだ。
ミステリ部分としては基本的にいつもの城平節で、いってみれば結構ちゃんとミステリをやっている方だと思う。気になる点としては声を出した要素が必要だったのかどうかがわからない。あれが全体の流れに大きく効いていたか? やや取ってつけたような感じがあって、それに対する解決もいくらか雑に見えた。
人の形をしたものとしては書かれているけど、実際のところこれは人ではないものとして扱うのだぞという意識を強く感じる描写がいくらかあった。なるほどそうしてみるといかにも妖怪同士的なかけあいにも思える。役割が定められているという話が全体の構図にも一致しているんじゃないかなというのが僕の見立てであるが。
しかしやっぱり城平はうじうじなよなよしたキャラクターを書く方が合ってるんじゃないか。というかスパイラルが好きなだけかもしれない。どうしても最初に読んでかなり影響を受けたからそういう見方をしてしまうのかな。作品を読む順番、体験する順番からどうしても自由ではいられない。似たようなものを読んだことあっても同じ評価をするというのは、人間には難しいことなんだろう。
こういう余計なことを考えるようになってしまったのが少し寂しくもある。スパイラルをめちゃくちゃ面白く感じられたのもおそらく小学生だか中学生だかの邪念がない時期に読めたからだという気はしていて、そういう鑑賞体験を得ることはもうできないのかもしれない。