日記

日記です

20210115

 とりあえず投稿版を多少修正してもう一度提出。もっと時間をかければいくらでも修正箇所は出てきそうだ。後は僕がどれだけ丁寧に向き合えるか、という勝負になりそう。

小説

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

 いやー、やっぱり面白い。ここまで奇想天外な設定でうねうね話を転がした挙句、『少年少女青春伝奇』に落とし込むっていうのは魔術か詐術か、そういった類のものに感じられる。そして、根本的にいろんな複雑さを認めつつやんわりと上手くやっていく考え方そのものが心地良いし、僕を少しだけ楽にする効用を持つのだった。

 城平京のこの「秩序」というものに対する感性、特に大衆の心理的な安全性や保守性を重く見るところは虚構推理とそのまま共通するところがあると言っていいだろう。いかにも近代から現代にかけての人文科学、といった趣がある。もちろんこのあたりの話は『スパイラル〜推理の絆〜』とか『絶園のテンペスト』でも見られるけれど、昔はより「運命」というキーワードを使うことが多かったのに対して、最近の城平京作品は「秩序」の方がキーになっている印象はある。

 あとは城平京作品のスコープの外にあるものについてちょっと思いを馳せたりした。城平京の作品では貧困とか根本的な無能的弱者はほとんど描かれない。嫌味な言い方をすれば夢想的な、エリート的な、育ちが良さそうなところがあるのかもしれない。僕もそれが好きだから欠点とは言いたくないんだけど、僕がこの先落ちぶれていけばいくほど城平京の作品を好きになれなくなっていくのではないかという恐ろしさはある。城平京の作品を楽しみ続けるためにも、ある程度の余裕を維持していきたい。

 そう、余裕。今回この小説を読んでいて、苦笑の美とでも言うべきものを感じていた。上手くいかない状況にあって、少し呆れつつ苦笑する雰囲気。最近の僕はそういう余裕を完全に失っていたなと思う。失敗とか自分の無能とかを馬鹿正直に受け止めてつらくなっていた。自分が目指していたのはそういう態度じゃないだろうと再確認したというのが今回の読書体験ではとても大きい。日記の文体変化も、こういう気づきを踏まえてちょっとやってみたくなったのである。