日記

日記です

1011

 進捗発表スライドを作るというのもあって、根本的に僕はどういう研究がしたいのかなということを考えていた。コンピュータ将棋は、もともと技術力を付けるのにちょうどよい題材に思えたから始めたという面が大きい。探索アルゴリズム機械学習、あるいはSIMD演算による高速化、並列化、そもそも大きいプログラムを効率的に開発する手法などを学べる気がしたし、Web上にそこそこ資料があり公開されているソースコードが多かったのも学ぶ環境として悪くないと思ったのだった。

 だから根源的なモチベーションがコンピュータ将棋自体にあるかというと少し自信がない。特に"研究"としてやるのであればもっと基礎的な部分であるとか、あるいは自然言語処理などの方向に行くのではないかなと去年は思っていた。結局はコンピュータ将棋以外をやる気が起きず、それを研究だと言い張るような形になってしまっているのだが。

 そんな曖昧なモチベーションでやっているわけだけど、最近、強化学習の枠組みは気に入っているのも確かだなと思い始めている。探索アルゴリズムも少しは好きと言える。やっているうちに、というやつなのかな。

 気に入りだした理由は、おそらくこれらが「意思決定」に関わるものと表現できるからだと思う。意志なのか意思なのか、それはどうでもいいけれど、「意思決定」という言葉が好きなんだろう。自由意志なんて信じていないくせに。いや、だからこそかもしれない。自由意志の否定は、意思決定のアルゴリズムを明らかにすることなのか。確かにそれはそうだよな。僕は世界が機械仕掛けでできていて欲しい。

 機械的に評価値を最大化する探索アルゴリズムが好きだ。報酬を最大化する強化学習が好きだ。きっとそれは、そういうことなんだと思う。僕もそれくらいシンプルに生きられたらいいのに。

 読んだ。

 話が終わりに近づくとどうしても悲しい話も回収しなくてはならなくて、そして締めに向かうということ自体もどこか悲しみを帯びるから、明るいだけではいられなくなってくる。しかしここで締めるのがちょうど良いのだと思う。あとがきで筆者自身も書きたいことが過不足なく書けたと言っていて、それは素晴らしいことだ。

 読書メーターの記録を信じるならば、以前読んだのは4年前のことだったらしい。4年の歳月は長い。先月に好きなライトノベルを聞かれたとして、この作品を挙げられたかどうか自信はない。でもやっぱり好きなシリーズだし、それをちょうど読みたいタイミングで読めたっていうのは良いことだなと思う。自分が読みたい話のイメージがあって、それをもとに持っている電子書籍の一覧を眺めて、見つけたのが『いなくなれ、群青』だったし、そこからこっちにたどり着けた。河野裕、得難い作家だと思う。

 すぐに風化してしまうものだとは知っていても、できるだけこの素敵な余韻が長続きしてくれると良いな。