日記

日記です

1205

今日の反省

 まぁ今日は僕のことなんていいじゃないですか。将棋界にとって歴史的な日だ。

将棋

 羽生挑戦者が竜王を奪取し、永世竜王および永世七冠を達成しました。尋常ではなくすごいことだと思う。いくら言葉を尽くしても、これのどれだけを語れるというのか。

 僕はまともにプロの将棋を観始めたのがちょうど羽生さんが佐藤名人相手に失冠するところだったので、圧倒的に強い羽生善治の姿を観たのは初めてかもしれない。特にシリーズを通して安定して、というのは。これが強い強いと言われた羽生善治の真骨頂か、という感じがする。

 確かにこれは人間の枠組みを超えているんじゃないか、と思わされるような凄みがある。プロ棋士なんて多かれ少なかれそういう要素があるものだとは思うけれど、その遥か上を行くような。どうして同じ人間で、その中でも特に将棋が強い人達が集まっている中で、こうも圧倒的な成績が残せるのだろう。

 芸術作品のようなものを観ているという感覚がある。だから、特段応援するわけではないけど、強い羽生善治があり続けていてほしい。将棋界にとって羽生善治はあまりに偉大な、ほとんど象徴と言っていいような存在なのだと思う。僕もそういうところを感じ取って、少し前に初めて買った扇子は羽生さんのものにしたのだった。

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 結果を知ったのは18時過ぎに帰宅してからだったわけだけど、「家に帰ったら永世七冠が誕生していた」というフレーズが気に入った。なにか淡々とした独白が続いていきそうな雰囲気がある。あまりにも非日常的な体験が、ぎりぎりのところで日常との接点を持つような響き。

 にしても4五銀からの攻めがあんなに厳しいとは。後手の銀は2二に引いた方が良かったんだろうか。根本的に3一玉と引いたのすらどうか、などと言われていた気がするし、角換わりも恐ろしいほど底が深い。

 人間の認知能力、思考能力自体がここから飛躍的に向上するとは思えないし、そうなると将棋は人間の脳力に対して適切な複雑さを備えたボードゲームであり続けるんじゃないか。人類としてはほぼ最高と思えるような到達点であるところの羽生善治が、まだ将棋をよくわかっていないと言うのだから。

今日の一冊

 というわけで今日はこの本を。

人工知能の核心 (NHK出版新書 511)

人工知能の核心 (NHK出版新書 511)

といっても羽生さん関係の本はこれしか読んだことがないので選択肢は一つだったわけだが。

 羽生さんの人工知能に対する知識はかなり豊富だし、見方もかなり冷静に思える。なにより、ある意味将棋界が人工知能と人間の付き合い方が問題となる現場であることに自覚的であり、そのことについてちゃんと向き合っていく必要があると感じてるように見えるのが良い。

 僕が何より尊敬したいのは、羽生さんは確かに将棋が鬼のように強いけれど、決してそれだけに興味があって将棋しかやらないような人間ではなくて、むしろいろいろなことに興味を示して、好奇心を大事にしている点だ。

 やはりそういう態度がなにかしら正しいということになってほしい。専門性(棋力)を高めるために他の全てを捨てるというのではなく、軽やかな精神こそが重要なんだと僕は信じたい。

 会ったことも話したこともないわけだから断片的な文章、インタビュー、振る舞いからくる想像でしかないわけだけど、羽生善治人間性と異常な棋力が共存できていることが、ありえないほど素晴らしいことに思えるときがある。他人を勝手に崇め奉るのは好きじゃないけど、羽生善治という人間にはそれだけ魅力があると言いたくなってしまうのだ。